|
このレースへの挑戦は心からワクワク出来る挑戦だった。 自分の脚質、体質からして最も自分の能力を発揮出来るレースではないか?と思っていた。 ⚫︎105kmのヒルクライム ⚫︎全てのカテゴリー同時スタート ⚫︎ラスト10kmが27%越えを含む一番キツイ坂 ⚫︎標高0mからスタートしゴールは標高3275m ⚫︎壮大な自然の中に作られた道を走れる 未知なる部分が多いけれど、どれもがワクワクする。 スピードよりも持久力には自信があるし、集団である程度行ける所まで粘っても、そこで売り切れずに自分のペースに持っていって坦々と走る事は出来るはず。 1300mで暮らしていると2000m位なら空気抵抗が少ない分、楽に感じる。 皆がキツくなってくればくる程、自分の力は発揮出来るはず・・・ 自然からのエネルギーも沢山貰えるだろう。 落車にだけは巻き込まれないように、それだけだった。 今回はラスト10kmにテーマを持っていた。 そこまでで疲労した身体でいかに走る事が出来るか? 「渡り鳥の領域」 自分の力以外の力で身体を動かしていく感じを求めていた。 体調も良く、レース当日はこれ以上は無い絶好のお天気。 スタート前に海からの素晴らしい日の出が見られ、太陽の光を身体に思い切り吸収! いいレースが出来そうな予感がした。 スタート前、元TT世界チャンピオンで、オリンピック銀メダリストでもあるEmma Pooley(イギリス)選手と AM6;30朝日を全身に浴びてスタート! 前には、ランプレ・メリダのフォン選手や、今回優勝のオスカル・プジョル選手らの姿も スタートから18km位まではパレード走行。落車だけに気をつけて前方の方で気持ちよく進めていく。 パレード走行とはいえ、40km/hほどは出ている。 何十年ぶり?の集団走行はスリル満点だけど気持ちいい。 上りといっても傾斜は極緩く集団の中では平地感覚でスピードも出ている。 リアルスタートからペースは次第に上がっていくが、集団走行の感が鈍っている感じもなく流れに上手く乗れて前方でいい感じで進めていけた。 しばらくは集団のまま進み、スタート0mの標高も3桁に上がる頃、スピードも上がり、集団が伸びて分断し始める。 自分がやばい状態になってきた時に一番後方に下がってきたのが元TT世界チャンピオンで、オリンピック銀メダリストでもあるEmma Pooley選手 彼女もキツイのか? ここは我慢して着けるだけ着こうと思ったが、どうしても着けずに後退。 彼女は第一集団の後方に着いたまま行ってしまった。 集団はいくつかに割れていたので、抜いていく数名ずつのグループで行きたかったけれど、その時はいっぱいいっぱいの状態でその中で進める事は出来ず、しばらく集団を見送りながら少し回復させて数名の集団で進めていく事となった。 この中には今回女子で3位の選手もいた。 自分の状態が落ち着いてからは結構楽なペースだったので私も積極的に先頭を引く。 調子良く、気分良く走れている。 ただ、一つだけ気になっていたのが水分が足りないという事。 これがこの後、大きな影響を及ぼす事となる。 今回のレースではフィードゾーンが4ヶ所設けられていてボトルが手渡されると聞いていたのでボトルは一本しか持って行かなかったが、未開封の状態でのペットボトル、未開封の缶ドリンクを手渡されても飲めないでいた。 水分不足の影響もあってか、レース中盤辺りから左足の前腿が攣ってきた。 それ程大した事は無く、軽いギアで回していくがダンシングは困難に。 自分のいる集団のペースはとてもゆっくりに感じているのにスピードを上げられないもどかしさ。 とにかくそのスピードに我慢しながら回復に努めるが状態は少しずつ悪化。 ごまかしごまかし集団についていく。 Taiwan Cyclist Federation 90km地点から4km程下る所がある。 ここを下ると例の一番キツイ坂がやってくる。 この下りで何とか足を回復してくれる事だけを願う。 回復してきたか?に思えたのも束の間。 上りに入るとまだ勾配が緩い時点で脚の異変が激しくなってくる。 これ以上の水分不足は危険なので、最後の補給地点ではペットボトルを貰って止まって蓋をあけて飲む。 今更遅い感はあったけど、一縷の望みを託して。 しかし、一度止まって漕ぎ出すと両足全部に痛みが走ってきた。 何度か停車し、思い切り攣って足がもげそうだった。何とか緩んだが、バイクに跨る事ができず、少し歩いた。 歩いていると少しずつましになってきたけれど乗車は出来ず。 シューズを脱いで歩く事にした。 私の自転車レースはその時点で終わった。 10km歩く? この間に多くのライダーを見送る事になるが、でもこのレースは完走したかった。 そう思えるレースだった。 ラスト8kmでどこかのサポートチームカーに乗る事を勧められたけれど、その選択は無かった。 今回のレースのテーマは正にこの地点にあったのに、最も楽しみにしていた所で、そこに挑戦する事すら出来なかった。 無念だったけれど、ゴールを目指すだけだった。 傾斜が緩くなるラスト5km地点からかろうじて乗れる様になり、騙し騙し少し下ってまた上る。 ゴールが見えて、これ以上攣らないように乗車したままゴールをくぐる事が出来た。 そして驚いた事に自分にとってはオマケのように6位入賞という結果が付いてきた。 Taiwan Cyclist Federation やられた感満載だったけれど、ゴールは意外と清々しくもあった。 やられたっ! やってしまった! って感じで。 これまで足が攣った事は殆どなく、こんなに攣ったのは初めてだった。 想定外の出来事。 良く言えば新しい自分に出会えた⁉︎ 今回のレースだけを見れば、思い切り失敗レースになってしまったけれど、思い切りchallengeしたから悔いはない。 ても、完走はしたけれど、バイクを押して5kmも歩いた自分の中では完走を認められない。 しっかりと振り返り、足りなかった物、必要な物、そしてこのレースで見えた物をここからにしっかりと繋げていきたい。 攣りの原因と思われる物 ⚫︎環境の変化(野辺山の気候と台湾の気候、温度差、湿度差) ⚫︎レース前までの水分補給は充分に行っていたが、レース中の水分補給が足りなかった事 ⚫︎前半絶好調過ぎて思っている以上に足にダメージを与えてしまっていたかもしれない事 ⚫︎この1ヶ月間はこのレースを想定してトレーニングを積んできたが、いかんせん膝の故障で年明けからここまでの走行距離は稼げていない事。(それは承知の上だったけれど来年の身体の状態は解らないので、調子の良い今挑戦する事にした) 100Kmも上るという日本では出来ない壮大なレースでした。 レース当日の天気は最高で、本当によくこんな所に道路を作ったなと思うような聳え立つ切り立った岩山、真っ青な空と緑の山々が広がっていました。 ここには日本の侵略など色んな歴史もあるようですが、台湾の方々は本当に親切に私達を受け入れて下さっています。 道路も日本のように整備が行き届いているわけではなく、ラフでデンジャラスな面もありますが、野生的な物が求められる所もあり、魅力的なレースでした。 2年前は雨の中、相当過酷なレースであったようです。 日本からの参加は10数名程度、プロ選手も多く、女子は世界チャンピオンのエマ選手をはじめ、アジアチャンピオン、台湾チャンピオン等強豪も参加し、現地では連日TV等で取り上げられています。 今回のレースの模様はFBにてLive動画も数多く、そして美しく壮大な景色や選手の走る姿を沢山配信して頂いています。 とても挑戦しがいのあるレースですが、その過酷さはコースそのものというより各自の走り方次第である所が大きく、そこがまた難しくもあり、面白い所であるとも思います。 今回のレースで私はその大自然からも沢山のメッセージを貰っていると思うのです。 それを少しずつでも自分のものとしていきたいと思っています。 このchallengeを応援して下さった皆様、ありがとうございました! 今シーズンの私のレースはこれで終了します。 春先まではレースはいよいよもう無理かな?という思いもありましたが、沢山の支えを頂いてここまで来れた事が本当に嬉しく思います。 私が選んだ道、膝を犠牲にして競技を続けるのでは無く、競技をやめて膝を守るのでも無いとても欲張りな道への挑戦は本当に良い方向に進んでくれたと思います。 そして今シーズンの最後に、この1年間学んできた事、やってきた事の集大成をぶつけられるレースに出会う事が出来ました。 その中でも私に入れて貰えた大きな5つのスイッチの事を書いてみたいと思います。 ⚫︎「一緒に頑張りましょう!」 ある人に軽い気持ちで掛けて貰った言葉だと思うけれど、心に突き刺さって常に私の心の中にある言葉。 何時も一緒に頑張っている心のライバルの存在がある。 その言葉を貰ってから1年余り、自分の中の大きなスイッチになっている。 ⚫︎一番苦しかった時に2人の恩師に掛けて頂いた言葉。 「競技を続ける云々に関わらずどんな事があっても身体を良くする事を諦めてはいけない。」 「アスリートの役割は一人一人違う。」 投げ出さず、これからの道に光を与えて頂いた。 ⚫︎新しい出会い 憧れのアスリートとの出会いとそのトレーナーの先生に心身をみて頂けるようになった事。 「本当にやりたい事は何か」 「人間の持つ可能性」 を常に植え込まれ、心身共に進化してこられている。 ⚫︎faith 自然学校での学び。 純粋な気持ちで信じる事。 想像・創造の世界 潜在能力を引き出していく為に大切な事を学んだ。 ⚫︎オーラ 私がボチボチ走れるようになってきた頃、あるロード選手の大怪我からの復活劇を目の当たりにした。 その発するオーラを肌で感じ、「自分も普通に走れるんじゃないか?」のスイッチが入った。 ・・・ 「渡り鳥の領域」 というテーマを持って臨んだこの大会。 苦しくなってから思い切り楽しむ! ラスト10kmは自分の力以外の力で走れたらいいなと思っていたけれど、今回はそこへの挑戦すら出来ず・・・ でもその頂きで見えたもの。 このレースを通して、壮大な美しい自然から様々なメッセージを、レースに関わった方々、応援して下さった方々から温かい心のメッセージを頂いたと感じています。 振り返れば振り返るほど思う事。 「このchallenge、最高に楽しかった~!」 まだまだ道の途上です。 まだまだ出来る! まだまだやります! 今シーズンの応援、どうもありがとうございました! そして来シーズンもどうぞ宜しくお願い致します! 2016 KOM TAIWAN アルバム(中華民國自行車騎士協會) |