台湾 KOM challenge 2017


日時:2017年10月20日(金) 
天候:晴れ   気温スタート23℃〜ゴール15℃
  
開催地:台湾 花蓮、太魯閣、武嶺
     標高0〜3275m 距離105km



主催: 中華民国自行車騎士協会
監修:運輸省コミュニケーションROC、観光局MOTC ROC、
    花蓮県政府、南投県政府
アシスタント:高速道路ROC総局、東石の森地区事務所



バイク: SPECIALIZED S-Works Amira
●ウェア: WAVE ONE
●ペダル: Look KEO BLADE2 Ti
●タイヤ Panaracer RACE Evo3 チューブラー
●クランク: Dixna ラ・クランク 162.5mm
ヘルメット: OGK KABUTO AERO R-1
アイウェア adidas EVIL EYE HALFRIM PRO
シューズ: SPECIALIZED S-WORKS 6 ROAD WOMAN'S
コンディショニング K2ヘルス&フィットネス八ヶ岳えっちゅう
脚攣り対策 アスリートネット湘南



昨年は完全に足が攣ってしまって、やられた感満載だったこの大会。
再び挑戦出来るか解らなかったけれど、あの日から、もう一度チャレンジしたいという気持ちで出場するつもりで過ごしてきた。
昨年の経験を活かして出来るだけの準備をして臨んだ今大会。

上手く走る為には客観的な数字を見ながらレースを走るという選択肢もあったかもしれないけれど、この1年間も自分の感覚を重要視してきたし、今回も数字を見る事は一切せずに、自分の経験と感覚を総動員させてレースを走った。

昨年同様、天候にも恵まれたレース日。
出場メンバーは昨年以上に豪華。
ツール・ド・フランス覇者のビンチェント・ニバリやカデル・エバンスも。
女子も、世界チャンピオンのエマ・プーリー、Giroマリアローザのクラウディア・リヒテンベルグらのTOPプロの選手と、豪華な顔ぶれが揃った。
そんな選手達が一斉に、日の出間もないAM6時にパレードがスタートした。

ほぼ平坦の十数キロのパレード区間は集団でゆっくりと進み、正式スタートが切られてからペースが一気に上がっていく。
スピードが上がったリアルスタート直後に、目の前の選手が落車!
「突っ込む、もうダメ?」と思っだけれどフルブレーキングで何とか少し踏んで(?)難を逃れた。
完全に止められる形になってしまったが、命拾い(トラブル無くこのままレースが続けられる)出来たおかげで、逆にその後起こるかもしれないトラブル等の怖いものがなくなった。

前半はまだまだ勾配が緩いので、出来るだけ集団に乗っていきたいが、ここで頑張り過ぎると後半が持たないので、自分の今の力量と調子を感じとりながら中切れなどに対応して使うべき足は使って先頭集団に付いていく。
これはニバリもいる集団

しかし、ここで無理しすぎるのは命取りなので、先頭集団を見送ってからも、自分のペースを大切にしながら、周りの選手と上手く協調出来る所は協調し、休める所は上手く休んで良い感じで進めていく事が出来た。


Taiwan Cyclist Federation

昨年はオフィシャルフィードを上手く活用出来なかった事が最大の失敗だったので、重量的なハンディは覚悟の上で自分でもbigボトルを2本持参していたし、今年はオフィシャルフィードがボトルを渡してくれたので水に対する問題も無かった。

昨年の失敗から、足攣り対策に関しては長年お世話になってきている平スポの御協力も得て準備をしてきたが、それでも他に経験出来ないこのレースならではなのだろう、今回も後半に入って足に違和感が出てきた。
攣ってしまわないような身体の使い方でペダリングをする。
そして、攣った時用に持参していたタブをそのまま舐める。
昨年の二の舞にだけはならないように神経を集中させながら、ペースもさほど落とす事なく、完全に攣る事もなく、昨年ストップした場所をやり過ごす。



このレースは最後の15kmが一番きついハイライト。
ここを女子選手3名がパックになって走っている。
その時点まで自分の走りに徹して他の女子選手を意識する事は無かったし順位も解らなかったけれど、自分の走りをしながらも2人の選手の走りを探りながら走る。



私は日常を標高1300mで生活し、2000mを越える峠でいつでもトレーニング出来る環境にいて、高地は自分には有利と思っているが、3000m辺りでは流石に呼吸も怪しい感じになってきて、筋肉もピクピクしてきてかなりギリギリの状態。
そんな状態でありながら、勾配の変化を利用して今出来る最良の走りをしていく。



終盤Carlee Taylor(Alé–Cipollini–Galassiaプロサイクリングチーム)との6位争い

1人の選手は余力の差がかなりあったようで追うのは厳しかったが、もう1人の選手からも私は何回も少し離れては追いつきを繰り返している。
それでも、私は昨年もここを走っているのでコースを知っており、勝てる可能性を繋げていく。
そしてゴール前最後の直線に繋がった。
沿道から「6price!」の声が聞こえたので、もしかしたら入賞圏内の6位争いなのかな?と思った。
そこでやっと横に並べたのでラスト100m位は後ろを見ずにフルもがきして迎えたゴール!

先着出来た喜びと共にゲートをくぐり、選手待機場に入る。
メダルを首にかけて貰った。
優勝したエマ選手を中央に女子の上位3人の選手のセレモニーが始まった。
偉大な選手達が眩しく見えた。

自分の力を出し切ってゴール出来た喜びと共に、私の順位も気になった。
順位を聞くと「6」と!
入賞は6位までなので、その場で万歳してしまった!

呼吸も筋肉も本当にギリギリだったけれど、今自分が持っているもの、経験や感覚なども含め全てを使いきってゴール出来たと思えて、それが本当に嬉しかった。
そして、順位は昨年と同じだけれど、その価値が自分の中で全く違う6位入賞出来た事で嬉しさを倍増させて貰えた。


Taiwan Cyclist Federation

自分の預けた荷物を貰いにいくと、今回もコース上で沢山励まして下さったあの台湾チームの監督の林(リン)さんが笑顔で出迎えて下さった。
嬉しかった!
一緒に写真を撮った。
私は元気だった。

リンさんが座る場所を用意してくれて、座ろうとしたら腰も足もビキビキで、おばあちゃんのように座ったらもうそこに根が生えたようになった。
リンさんが温かいジンジャーティーやコーヒーを持ってきて下さって少しずつそれを飲む。
その温かさ、潤いが身体に染み渡っていった。

「あしたのジョー」のラストシーン
「燃え尽きたぜ、真っ白に・・・」
大好きなシーン。
私もこのまま真っ白な灰になる?
それもカッコいいな・・・


臺灣自行車登山王挑戰 Taiwan KOM Challenge

そんな事を思いながら、時間が流れていった。
30年以上自転車競技をやってきた中でこんな風に「自分自身を使いきった」と思えたのは初めてのような気がする。

ロードレース、MTBレース、今回のレースとは違ってもっともっとシビアな闘い、日本代表として闘ったアジア大会や世界選手権、オリンピックなどなど、勿論自分が出来得る全てを出してきた。
それらと比べる事は出来ないけれど、それらのゴールとはまた違った感覚だった。
短時間で自分の全てを出せる短距離選手と違って、昨年のレポートで「自分の脚質、体質からして最も自分の能力を発揮出来るレースではないか?と思っていた。」と書いていた通りで、パレード区間を含め約5時間のレースは、あらゆる能力を使い切れた満足感があった。

私がロード選手だった頃、国内レースは距離も短く、競技人口が少ないMTBレースや国内のヒルクライムレースでは単独で走るタイムトライアルに近いレースが殆ど。
単なる力勝負はそれはそれでやりがいもある。
でもその中でもゴールまで競る事が出来たレースはいくつかあって、ギリギリの中で頭も使って持っているものを駆使していく感覚は楽しかったけれど。

今回のレースは、まず体力、そして体力だけでは無くて、本当に自分の持っている物を引き出していく必要があって、全てを試されて・・・
そんな感じが、今までに無いゴールにしてくれたのだと思う。

「やりきった」
そんな思いで少しだけ涙が出た。

「このレースはもう終わりに出来るな」
これ以上上手くは走れないだろう。
これ以上の結果ももう求められないだろう。
「また何か別の新しい挑戦を見つけようかな」
「でも、ここへの挑戦楽しかったな。それが無くなってしまうのは寂しいな。」

・・・
そのまま、真っ白な灰にはなれなかった。
温かい飲み物は身体を潤していった。身体も元気を取り戻していった。
写真を撮ったり、頂上で提供されるランチを食べたり、同じレースを素晴らしく走りきった日本選手達と少し話をしたり、楽しい時間を過ごした後、優勝したニバリ選手と同じ位の時間をかけて全ての選手が車で下山した。

野辺山に戻り、沢山の大会の写真がどんどんアップされていくのを見ている。
リンさんからも写真やメッセージが届く。
「来年また会えるのを楽しみにしている」と。

ゴールして思っていた事。
「このレースはもう終わりに出来るな」
「これ以上の結果ももう求められないだろう。」
そんな気持ちが少しずつ変わっている今。

またこのレースに挑戦するのか、別の事に挑戦するのか、今はまだ解らないけれど、色々と自分の気持ちも整理しながら、ここからもなりたい自分に向かって歩んでいきたい。


このレース、このレースに向けたもの、そして沢山頂いた温かいものは私の一生の宝物です。
このレースに再び挑戦できた事、そしてしっかりと走りきれた事に感謝します。
これで今シーズンの私のレースは終了です。
サポート、応援、ありがとうございました。




●足攣り対策として、長年お世話になってきている平スポより御提供頂いた「マグネシウムローション」と「ORS
私はサプリメントを使用する事は多くないのだけれど、長年の信頼関係を強い力にさせて頂いている。
平スポの石井さんが改良を重ねて開発し、販売前から試させて頂いていた「マグネシウムローション」
今回のレースに向けたコンディショニング、レース数日前からレース当日に足にすり込む。
経口補水液が作れるタブレットである「ORS」はレースに向けたロングのトレーニングで試し、飲みやすさや感じの良さを実感。
トレイルランナーなどは攣ってしまった時、直接に口に入れてしまう人が多いようだという情報を頂いていたので、持参した2本のボトルに入れた他に、タブを取り出しやすい小さな袋に入れてポケットに持参。(トレーニングでは試しにレーパンの裾に直接挟んでおいたら、見事に溶けて無くなってしまったので、それはダメだと解った)
そして今回レースの後半に入った頃「やばいな」と思ったので、ポケットのタブを直接口に入れてみた。
その後、完全に攣る事なくゴールまで行けたのはその恩恵も大きいと思う。
今回、他にもレースで使用したいものなどは、出来るだけ同じ状況でトレーニングで試してみて、良いものや良い方法を取り入れていった事が成功したと思う。



●良いパフォーマンスを出せるように
現在身体をみて頂いている越中先生に出発前に指導を受けた事は、呼吸筋と仙骨周りの筋肉を固まらせないようにしておく事。
何処でも簡単に出来る深い呼吸法を1日10分やる。
勿論実際に効果があるのだと思うけれど、
「これをやれば大丈夫」
「これを最後までちゃんとやったから大丈夫」
と思える事、たったそれだけの事でも1つ自信を持って臨む事が出来たと思う。


●バイクサンド
レースで良い状態にしておかなければならないのは、自分自身と自転車。
飛行機での旅、輸送で自転車が壊れてしまってはレースに参加することさえ出来なくなる。
安全に自転車を運ぶ為に安心出来るもので。
自転車を宙吊り状態で梱包出来るバイクサンドはその点でも安心。
そして、軽量である事も飛行機移動ではポイントが大きい。



●親切にして頂いた台湾の方々
昨年のこの大会のレース中に完全に足が攣って立ち止まってしまったラスト15km地点。
ここからがこのレースのクライマックス!という地点でそこを楽しみにしていたのに挑戦する事すら出来なかった。
その時、その地点におられた台湾チームの監督さんに励まして頂いた。
ゴール後にその監督さんとお会い出来て、そこで撮って下さっていた写真なども頂き、チーム員の方々ともお友達
今回は彼らとの再会もとても楽しみにしていた。
日本を離れてのレースは、上手くいかない事も色々出てきて大変な所もあるけれど、今回もチームの一員であるかのように援助して頂いたり、監督がゴールで出迎えて下さって一緒に喜べた事もとっても嬉しかった。
他にも台湾の方々には、あらゆる場面でとても暖かく親切な対応をして頂けて、私達の旅を素晴らしいものにして頂けた。
私も見習わなきゃ!と思う事がいっぱいだった。



●メディア、 SNS・・・

昨年もそうであったけれど、この大会はメディアで沢山取り上げられ、大会のLive放送や動画、選手達の写真も大量に公開して下さっている。
そういったものを見るのはレース後の楽しみでもあるし、自分が写っているものがあるのはやっぱり嬉しいし、見て頂ける事も嬉しい。
レース中だけではなく、大会として、また旅全体としてどれだけ楽しめるかという事がとても大切だと思うが、それら全てを含めてとても魅力的なものになっているのだと感じる。

レース後のライダーズパーティー。GBRのプロライダー達との一時 Emma Pooleyと




◆Resalt
●男子総合  105km  標高差約3450m
1位  Vincenzo Nibali  ITA  BAHRAIN MERIDA
2位  Oscar Pujol Muñoz  ESP  TEAM UKYO
3位  John Ebsen  DEN  VM cycling Team
●女子総合  105km  標高差約3450m
1位  Emma Jane Pooley  GBR  2017 KOM
2位  Hayley Simmonds  GBR  Team WNT Pro Cycling
3位  Emily Grace Collinge  GBR  2017 KOM
6位  中込 由香里  JPN  team SY-Nak





臺灣自行車登山王挑戰アルバム