●『水』の強さに学ぶ


由香里「あるオリンピックの開かれた年、MTBの国内選考会は3戦行われました。
私はその年一番の目標をオリンピック出場に置き、トレーニングも充分にこなし期待を持って選考会に望みました。
ところが、第一戦、第二戦と惨敗し、目標がほぼ絶望的になっていたその時、ある本を主人から手渡されました。
ちょうど自分の考えていた事と一致した所があり感銘を受けました。
櫻木健古という人が書いた『水の強さに学ぶ 勝つ極意』という本です。
私の大きな反省点とは、気負い過ぎ、力み過ぎ、勝負を意識し過ぎという事がありましたが、まさに水の様な強さがなかったのです。この本の一部を抜粋してみます。
『水は柔軟の最たるもの。だからこそ、かたい物に対して、最強の力を発揮するのである。木の革のかたいもんのも、水に浸せば柔らかくなる。水は石にも穴をあけるし、量が多ければ、堅固な堤防をも壊す。激しく動けば巨船ひっくりかえる。柔弱で動きが自由自在だから、このような事が可能なのである。』
『水は他のどんな形にも、ピッタリと沿うことができる。』
『強い心で振る太刀は荒い。荒いばかりでは、勝つことは難しい。無理に人を斬ろうとすると、かえって斬れない物である。』
『不思議なようだが自己強化とは、”引き算”なのである。自分の中の要らない物を捨ててゆく。それによって、強くなるのである。』
ワールドカップのビデオなどを見ていると、1位の選手はもちろん、2位や3位の選手も手を挙げて観客の声援にこたえてゴールしてきます。悔しくてもふてくされてゴールしてくる選手は殆どいません。
今まで大会で入賞して、おめでとうと言われても、優勝でなかれば嬉しくないと思っていた私とはどこか違うのです。
MTBレースに大切なものを何か掴んだ気持ちになった私は、余計な事は考えず笑顔で最終戦のスタートラインに立つことを決めました。
そして自分が水になった気持ちで柔らかく自然や地形に沿って走る事を心掛けました。
結果は優勝。
それだけの事で勝てたとは思いませんが、大きなプラスになったことは確かです。
残念ながらオリンピックには出場は逃しましたが、目標に向かって必死になれた事、今まで自分になかった大切な物を学んだ事、大きな収穫を得た選考会でした。」

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